SECURITY NOTE — 072

Google Workspaceの「アーカイブ済みユーザー」で退職者データを長期保持し、ライセンスコストを最適化する方法

Google Workspaceの「アーカイブ済みユーザー」機能は、退職者のデータを長期保持しつつライセンスコストを最適化するための専用ライセンス形態です。この機能は、通常ライセンスの維持とアカウント削除の間の「第三の選択肢」として、情シス担当者のデータ管理とコスト削減の課題を解決します。

この記事を読んだほうが良い人

  • 100名規模でGoogle Workspaceを管理する情シス担当者
  • 退職者アカウントのデータ保持とライセンスコスト削減を両立させたいと考えている人
  • Google Workspaceの退職者対応フローを見直したい人
  • Google Vaultを活用したデータガバナンスに関心がある人

退職者アカウント管理のジレンマと「アーカイブ済みユーザー」

退職者のGoogle Workspaceアカウントの扱いは、情シス担当者にとってデータ保持とコストのバランスをどう取るかが常に問われる点です。

従来の退職者アカウント対応の課題

従来の退職者アカウント対応には、以下のような課題がありました。

  • アカウントを有効のまま維持する:
    • メリット: データは完全に保持され、必要に応じてアクセス可能です。
    • デメリット: フルライセンス費用が発生し続け、コスト効率が悪い状態が続きます。また、退職したユーザーのアカウントが有効なまま残るため、セキュリティリスクも伴います。
  • アカウントを削除する:
    • メリット: ライセンス費用を削減できます。
    • デメリット: GmailやGoogleドライブなどのデータが一定期間(通常は20日間の猶予期間)後に完全に削除され、監査やコンプライアンス要件に対応できなくなるリスクがあります。Google Vaultで保持していても、ユーザーアカウント自体が消滅するとデータ管理が複雑になることがあります。
  • アカウントを停止(サスペンド)する:
    • メリット: ユーザーはログインできなくなり、データは保持されます。
    • デメリット: ほとんどのGoogle Workspaceライセンスでは、サスペンド状態でもライセンス費用が発生し続けるため、コスト削減にはなりません。

これらの課題に対し、Google Workspaceは「アーカイブ済みユーザー (Archived User)」という専用のライセンス形態を提供しています。これは、退職者のデータをGoogle Vaultで長期保持しつつ、関連するライセンス費用を大幅に削減するための機能です。

アーカイブ済みユーザーとは:機能と特徴

「アーカイブ済みユーザー」は、退職したユーザーのGoogle Workspaceデータを、低コストで保持するための特別なライセンスです。Google Workspace管理コンソールのヘルプによると、アーカイブ済みユーザーはログインできませんが、GmailやGoogleドライブなどのデータは保持されます。

主な特徴

  • 低コストでのデータ保持: 通常のGoogle Workspaceライセンスよりも大幅に低い費用で、退職者のデータを保持できます。
  • Google Vaultとの連携: アーカイブ済みユーザーのGmail、Googleドライブ、Google Chatなどのデータは、Google Vaultの保持ポリシーと訴訟ホールド(法的証拠として特定のデータの削除を一時停止する機能)の対象となります。これにより、コンプライアンスや法的な要件を満たしたデータ保持が可能です。
  • ユーザーのアクセス制限: アーカイブ済みユーザーはGoogle Workspaceにログインできません。データは管理者を通じてのみアクセス可能です。
  • 保持されるデータの種類: Gmail、Googleドライブ、Google Chat、Googleカレンダー、Googleドキュメント、スプレッドシート、スライド、Googleサイトなどのデータが保持されます。ただし、Google Vaultでの保持には、別途Vaultライセンスが必要となる場合があります。

サスペンド・削除との機能差分

機能/状態 有効ユーザー サスペンド済みユーザー アーカイブ済みユーザー 削除済みユーザー
ログイン可否 不可 不可 不可
ライセンス費用 フル フル(※) 低コスト なし
データ保持 保持 保持 保持(Vault連携) 削除(20日間の猶予期間後に完全削除)
Vault対象 対象 対象 対象 対象外(削除後)
再アクティブ化 N/A フルライセンスで可 フルライセンスで可 20日以内は復元可、以降は不可
※柔軟なプラン(月単位でユーザー数に応じて課金されるプラン形態)の場合、サスペンド中は課金されないこともありますが、年間プランでは通常課金が継続します。

管理コンソールでのアーカイブ手順とVault連携

ここでは、Google Workspace管理コンソールでユーザーをアーカイブ済みユーザーに移行する手順と、Google Vaultでのデータ保持設定について解説します。

1. ユーザーをアーカイブ済みユーザーに移行する

ユーザーをアーカイブ済みユーザーにするには、まず対象のユーザーから既存のGoogle Workspaceライセンスを削除し、その後「アーカイブ済みユーザー」ライセンスを割り当てる必要があります。

  1. Google Workspace管理コンソールに管理者としてログインします。
  2. 左側のナビゲーションメニューで「ディレクトリ」>「ユーザー」に移動します。
  3. アーカイブしたいユーザーを検索し、クリックしてユーザーの詳細ページを開きます。
  4. ユーザーの詳細ページで、「ライセンス」セクションを見つけます。
  5. 現在割り当てられているGoogle Workspaceのライセンス(例: Business Standard, Enterprise Standardなど)を削除します。管理コンソールのUIによっては、既存ライセンスを直接「アーカイブ済みユーザー」ライセンスに上書き割り当てできる場合もあります。
  6. ライセンス削除後、再度「ライセンス」セクションで「ライセンスの割り当て」をクリックします。
  7. 利用可能なライセンスの中から「アーカイブ済みユーザー」ライセンスを選択し、割り当てます。

この手順で、ユーザーはアーカイブ済みユーザーとなり、ログインはできなくなりますが、データは保持され、Vaultの対象となります。

2. Google Vaultでのデータ保持設定を確認する

アーカイブ済みユーザーのデータが適切に保持されるためには、Google Vaultで適切な保持ポリシーが設定されていることが前提です。

  1. Google Vaultに管理者としてログインします。
  2. 左側のナビゲーションメニューで「保持」に移動します。
  3. 既存の保持ポリシーを確認するか、必要に応じて新しいポリシーを作成します。
    • 全般的な保持ポリシー: 組織全体に適用されるデフォルトのポリシーです。退職者のデータ保持期間がこのポリシーでカバーされているか確認します。
    • カスタム保持ポリシー: 特定の組織部門やユーザー、特定のデータタイプ(例: Gmailのみ)に対して、より詳細な保持期間を設定できます。退職者グループなどを作成し、それに適用することも検討します。
  4. ポリシー設定では、Gmail、ドライブ、Chatなどのサービスごとに保持期間(例: 7年間、無期限など)を設定します。

Google Vaultのヘルプによると、アーカイブ済みユーザーのデータは、これらのVault保持ポリシーに基づいて、指定された期間保持されます。ユーザーがアーカイブ済みになっても、Vaultの保持ポリシーは引き続き適用されます。

ライセンスコスト最適化の視点

「アーカイブ済みユーザー」ライセンスを導入することで、情シスは退職者アカウント管理におけるコストを大幅に削減できます。

通常ライセンスとアーカイブライセンスのコスト比較

具体的な料金はGoogle Workspaceのエディションや契約形態によって異なりますが、Google Workspace管理コンソールのヘルプによると、アーカイブ済みユーザーライセンスは、フル機能を持つ通常のGoogle Workspaceライセンスと比較して、大幅に低価格で提供されています。具体的な料金は、管理コンソールの見積もり画面またはGoogle営業への問い合わせで確認できます。

例えば、年間プランで100名の組織が退職者10名のアカウントをフルライセンスのまま維持している場合を考えてみましょう。 - フルライセンス維持の場合: 10名分のフルライセンス費用が発生し続けます。 - アーカイブライセンスに移行した場合: 10名分のアーカイブライセンス費用に切り替わるため、その差額分が年間で削減されます。

このコスト削減効果は、特に従業員数の多い組織や、退職者が頻繁に発生する組織において顕著になります。データ保持の必要性があるものの、ユーザーが積極的に利用しないアカウントに対して、適切なコストで対応できるのがアーカイブ済みユーザーの最大のメリットです。

コスト削減とコンプライアンスの両立

アーカイブ済みユーザーは、単なるコスト削減策に留まりません。Google Vaultと連携することで、退職者の電子メールやドキュメントなどの重要なデータを、法的な要件や社内コンプライアンスポリシーに従って確実に保持できます。これにより、将来的な監査や訴訟対応に備えつつ、無駄なITコストを削減するという、情シスにとって理想的な状態を実現できます。

まとめ

Google Workspaceの「アーカイブ済みユーザー」機能は、退職者アカウントのデータ保持とライセンスコスト最適化という、情シス担当者が抱える二つの大きな課題を解決する強力なソリューションです。

  • 低コストでのデータ保持: 通常ライセンスと比較して大幅にコストを抑えながら、退職者のGmailやドライブなどのデータを保持できます。
  • Google Vaultとのシームレスな連携: 監査や法的要件に対応するため、Vaultの保持ポリシーがアーカイブ済みユーザーのデータにも適用されます。ただし、Vaultライセンスが別途必要な場合があるため、前提条件の確認が必要です。
  • 管理の簡素化: 管理コンソールから簡単にユーザーをアーカイブ状態に移行でき、退職者対応フローを効率化できます。
  • 「第三の選択肢」: フルライセンス維持による高コストと、アカウント削除によるデータ消失リスクの間の最適なバランスを提供します。

この機能は、データ保持が法令や社内規程で義務付けられている組織、特に退職者が定期的に発生する組織において、コスト削減とコンプライアンス強化の両面で有効な手段です。退職処理フローにアーカイブ移行ステップを組み込むことで、無駄なコストを削減しつつ、必要なデータを確実に保持する体制を構築できます。

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